ヘルマン・ハウザー1世作 
リュートギター/ラウテ/マンドーラ
ミュンヘン、1915年
価格67万円 
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ヘルマン・ハウザー一世作のリュートギターです!
しかも、これまでに見たことのないほど、
状態、音色や弾き心地の良い楽器です。
試奏動画

ハウザ一世のスペイン式ギターは、セゴヴィアやブリームなど
20世紀を代表する大ギタリストたちによって使われ高い評価を受けましたが、
彼はもともとシュタウファー系のウィーン式ギターやリュートギターの名工でした。

ハウザー一世のウィーン風ギター(1911年)とリュートギター(1914年、出展楽器とは別の個体)

現代ではリュートギターと呼ばれることの多いこの楽器ですが、
もともとはバロック時代にドイツ語圏で愛好された
「マンドーラ」「ガリホン」というリュートに似た楽器でした。
その起源はリュートよりも古い、別系統の楽器だったのです。

テクラ作のマンドーラ

マンドーラは19世紀にリュートが使われなくなってからも生き残り、
ドイツ風リュート(ラウテ)あるいはマンドーラの名前で愛好されました。

19世紀末の楽器カタログから

20世紀初頭にドイツで国民的音楽運動が盛んになると、
リュートギターは最も「ドイツ的」な楽器として脚光を浴びるようになります。
調弦がギターと同様で容易に和声が弾け、持ち運びも容易な楽器として、
野山で民謡を歌うワンダーフォーゲル運動にも良く用いられました。

また折からの古楽復興ブームにも乗り、リュートギターは「現代リュート」として
中世、ルネサンス、バロック音楽の演奏に大いに用いられました。
その立役者とも言えるのがドイツの音楽学者/ギタリストだったハンス・ダーコベルト・ブルーガーで、
彼はリュートギターの教則本/教本を出版しています。
リュートの歴史や奏法にも触れられている大著です。


またブルーガーは音楽史上初の「バッハ・リュート曲全集」を編集、出版しましたが、
これもリュートギターを念頭に置いています。

ブルーガーのバッハ:リュート曲集

(マンドーラについては現代ギター誌2024年6月号に私の論考が載っています。
ご希望の方はお知らせ下さい)


今回の楽器、流石にハウザーの作で、
素晴らしい材料とクラフツマンシップを見ることが出来ます。
また音色や音量も大変素晴らしいものです。
試奏動画

スプルースの表面板、メープルの裏横板。



裏板のメープルの木目は見事です。


ロゼッタは大変美しく彫られています。


ヘッドの造形も流石です。


黒檀の指板はスケロップで押弦は容易です。

ラベルはバロック時代のそれを似せたもので、[Hermann Hauser Lautenmacher]
(ヘルマン・ハウザー リュート製作家)
と誇り高く書かれています。

やはり伝統あるドイツの弦楽器製作家の一員であるという意識の表れでしょうか。

弦長は645ミリ。ハウザーのリュートギターとしては典型のサイズです。
現状では古楽器用のナイルガット/ナイロン/巻き弦を張っています。

流石にハウザーの作、非常に品位の高い音色で大変よく鳴ります。
その透明かつライヴな音色はやはり一流の弦楽器製作家の手になるものです。

状態は非常に良く,割れや修理の跡も見当たりません。
弦高も適正、すぐに演奏に使えます。
(ネットなどでブリッジがオリジナルでなかったり、大きな割れのある
ハウザーのリュートが安価に売りに出されるのを見ることがありますが、
ハウザーの音色の秘密はブリッジの形状とそのアーチにあります。
ブリッジが安易に替えられている楽器には気をつけましょう)

リュートギターというと、なにかアナクロ的に捉えられがちなのですが、
これはこれで歴史の生き証人として、
また同時に現代にも通用する生きた楽器として考えられるべきでしょう。

特にクラシックギターを演奏される人で、
ルネサンス・バロック時代の作品を弾いてみたい方には
うってつけの楽器だと言えるでしょう。

私の様な純粋?古楽器奏者もこのような名器を手にするとこの楽器をコンサートに使ってみたくなります。
(ハウザーのリュートギターは実は一台所有しています)↓


このタイプの楽器は20世紀の中頃に日本にも輸入されており、
小磯良平の作品に多く描かれていますね。
私自身、神戸の小磯良平記念美術館で彼の所有していたリュートギターを見ましたが、
実に綺麗な材料とプロポーションで製作された美しい楽器でした。


また武満徹の「リュート作品」も実際はリュートギターのために書かれています。
その意味で日本の文化とも大きな関わりを持っていると言えるでしょう。

(実際、21世紀の今日、「歴史的モデル」として製作されているリュートも、
実際には現代人のニーズに合うように変更されているのが通常ですから、
今回のような楽器が「オーセンティックではない」と言われる筋合いはないのです。

20世紀前半に製作されたリュートギターにはガット弦/シルク上の巻き弦が張られていたことを考えると、
ナイロン/ナイロン上の巻き弦がデフォルトの現代のリュートよりもより歴史的リュートらしいとすら言えるかもしれません。

ミュンヘンの博物館にはハウザーの楽器のコーナーがあります。

ミュンヘン州立博物館のハウザーコーナー

またヘルマン・ハウザーが手にとって検分したとされるオリジナルのリュートや古いギターのコレクションも充実しています。


つまり、リュートギターは、ハウザーがオリジナルをよく調べた上で、
時代のニーズに合わせて自分なりの解釈で製作した楽器で、
相応の敬意を払われるべきものです。

その意味で、例えば現代のリュート製作家の多くがそうであるように、
オリジナルのリュートを手に取ったこともなく、歴史的な資料の知識もなく、
他の現代製作家のリュートを真似する態度とは根本的に異なります・)


ハウザー一世の楽器はこのところ高騰しており、
状態の良いスパニッシュギターは一千万円を超えます。
ウィーン式ギターやリュートギターはまだ手の届く価格ですが、
そのうちにどんどんと上がってしまうのかもしれません・・・

先頃出版された[The Lute in Europe]にも
ほぼ同様の仕様のハウザーのリュートギターが写真付きで掲載されています。


日本での試奏が可能です。
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