エッセイ 「フルートとわたし」



フルートを好きである。
中でも1鍵のトラヴェルソの音は非常に好きである。

音楽院の学生時代から1キイフルートには興味を持っていたが、
専門のリュート/ア−リーギターの修行で手一杯で、
なかなか時間が取れないでいた。

しかし、このたび思い立って楽器を入手して始めることにする。
幸い現在研究中のブレンナーの曲集の表紙には
「ギターもしくはフルートのための」とある。
曲の理解のためにはやはりフルートを研究する必要がありそうなのである(←言い訳)



まずは楽器を入手しなければ!
初心者にはお約束のアウロスのプラスチック・・・
とも考えるが危うく思いとどまる。

日頃から自分の門下生には
「初心者から良い楽器を使いなさい。
安物は結局はお金の無駄です。」
と口をすっぱくして説いている自分である。
安モンではじめるのは外聞が悪い・・・

というわけで、泣きながらもカネと人脈にものを言わせて探してきたのがコレ



アウロスの「蛍光灯」ではありません!
18世紀のロンドンのメーカー、カヒューザック1世の総象牙。
カヒューザックとしては比較的初期の作品で、
年代は1760年ころ、ピッチはA−420くらい。

吹いてみるとやはり非常にいい音ですが、流石になかなか重く、
また象牙の楽器は吹きすぎての割れが心配。
この楽器は割れもなく非常に良い状態であるだけになお心配。
ううむ・・・やはりアウロスのプラスチック 木製の楽器も手に入れようか・・・


というわけで、
残り少なくなったカネと相変わらず豊富な人脈にものを言わせて探してきたのがコレ。



やはりカヒューザック1世の作品
というか、上の象牙の楽器と製作年代、長さ、音程など殆どうりふたつ。



二つならべるとやっぱりよく似ています。

この木製のカヒューザックの入手は随分大変でした・・・
この楽器は、フルート4本とピッコロ3本まとめて7本売りにだされているうちの1本であり、
どんなに頼んでもオーナーはばら売りを承知しません。

そこで思い切って7本まとめて引き取ったわけです、しくしく・・・

でもピッコロはともかく他のフルートは全てGoulding系の良いものであり、
なかなか興味深いものであります。



フルートを始めて思ったこと

その1
やっぱり初めはなにがなんだかわからない。
音の出し方も、構え方も、楽器の手入れ法も。
とりあえず誰でも良いから教えて欲しい。
「せんせー、なにもわかりませんけどどうぞご指導おねがいします」
っていう気になるね。
(おなかを出した犬くん的な気分?)

でも、リュートやアーリーギターを僕が教える場合、
「出来るだけ自分で勉強してからレッスンに来なさい。
本に書いてあるようなことをレッスンで話すのは時間の無駄です!」
っていうことをいいそーになる・・・ちょっと反省しました。
(そこでますます、生徒にはヤサシイせんせいになりました)


その2
ピッチがA−420程度のカヒューザックでも指の拡張はそう簡単ではない。
これがA-390程度になるともっと大変なのでしょうね。
A-440くらいのグールディングの楽器はやっぱり大分楽。

このように考えると、弦長が長めで低いピッチでよく響く弦楽器と、
左手の拡張などのため、できればピッチを高めにしたい管楽器で、
同時代でも二つ(以上の)異なるピッチが存在したのは非常に納得がいく。
ちなみに現在の古楽器のピッチである392、415、440、446などは
当時のフルートやリコーダーなどの高いピッチ・スタンダードに準じています。
19世紀に至っても、プラッテン夫人などが言うように
ギターのピッチはフルートなどより全音くらい低かったと思われます。
アンサンブルの場合は、どうやら弦を交換せずにそのまま調弦を上げていたようです。


その3
自分でやってみると、プロのフルート奏者ってみんな上手だなーってやっぱり思う。
ちなみにこれまでに竹内が(リュート奏者として)共演したフルート奏者
スティーブン・プレストン、リザ・ベジノシウク、ナンシー・ハッデン、アナベル・ナイト、
朝倉君、有田さん、ちゅーさん(中村氏)、りりちゃん(前田さん)、
みのさん(吉沢さん)、とーるさん(吉澤さん)、やすさん(安井さん)・・・
その他たくさん・・・

みなさん!尊敬してますよ!


その4
ちょっと旋律が奏でられるようになると、旋律楽器奏者の気分がよくわかる
(つまり慢心する)
下は下だって思ったりする・・・(意味不明?)


「趣味のトラヴェルソ」に戻る 
                     メイルを出す