無銘:オリジナル18世紀古典マンドリン(So called [バロックマンドリン])
(フランス、18世紀後半)
価格50万円 日本で試奏できます。
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大変珍しい18世紀のオリジナル・ナポリタン・マンドリンです。

このタイプの楽器は1740年代にナポリに成立し、18世紀を通じてヨーロッパ中に大流行しました。
著名な作曲家としては、ウィーンのモーツァルト、フンメル、ベートーヴェンなどがこのタイプの楽器のために作品を書いていますが、
特に18世紀後半のフランスではこのタイプのマンドリンが大流行し、レオーネ、フォルケッティ、デニなどにより
重要な教本と曲集が出版されました。


フランスの教本に見られる曲は現在ではあまり知られていませんが、通奏低音付きのソナタやデュエット、
技巧的な変奏曲など大変価値の高いものです。

レオ-ネのマンドリン教本/曲集へのリンク
https://imslp.org/wiki/M%C3%A9thode_raisonn%C3%A9e_pour_passer_du_Violon_%C3%A0_la_Mandoline_(Leone%2C_Gabriele)
 

研究書としては次の2冊は必読と言えます。16〜19世紀までのマンドリンについて詳しく書かれています。

ジェイムズ・タイラー/ポール・スパークス:「アーリー・マンドリン」 https://www.amazon.co.jp/Early-Mandolin-Music/dp/0198163029

ポール・スパークス:「クラシカル・マンドリン」 https://www.amazon.co.jp/Classical-Mandolin-Early-Music/dp/0195173376/ref=sr_1_1?s=english-books&ie=UTF8&qid=1532616707&sr=1-1&keywords=classical+mandolin


フランスでは当初は楽器はイタリアから輸入していたと思われますが、すぐにパリやミルクールで良質の楽器が製作されるようになりました。
今回の楽器もそのような一台で、無銘ですが当時の優れたフランスのマンドリン製作の良い見本と言えます。

19世紀ー現代のマンドリンとの大きな違いは以下の通りです。
全体に軽く作られている。指板は表面板と同一の高さ。木ペグ。
弦は第1コース:ガット、第2コース:アイロン、3コース:ブラス、第4コース:巻き弦。

19世紀後半のラミーのマンドリンとの比較

18世紀マンドリンは大流行した楽器なだけあって、博物館などにはオリジナルが残されていますが、市場に出ることは非常に稀です。
しかも今回の楽器は完全に修復されており、すぐに演奏に使うことが出来ます。

スプルースの表面板。


ロゼッタには真珠母貝の螺鈿細工があります。
大変美しい細工ですが、ここはもしかして19世紀初頭に付け加えられたものかもしれません。


黒檀の指板。フレットは打ち直しされているようで状態は大変良いです。


美しいメープルの裏板。

マルチリブでしかもスケロップされています。


黒塗りのネックとヘッド。


ヘッドはバロックギターに類似したデザインで、8本のツゲのペグが使われています。


良い材料を使い、丁寧、誠実に作られている楽器で、
ここまでコンデションの良い18世紀マンドリンは非常に稀です。
現代のマンドリンよりも随分と軽く作られていますが、ヴィナーチャやフィラーのなど同時代のイタリアの楽器よりは板厚があり、
健康な状態を保つことができたのかもしれません。

歴史的な弦を使用して羽軸のプレクトラムで演奏すると、
その音色の甘美さ、余韻と音量との豊かさにだれもが感心するでしょう。

この時代の楽器によるマンドリン演奏はまだあまり盛んとは言えませんが、ヨーロッパでは若手の優秀な専門家も出てきています。
日本は欧米にもマンドリン王国として知られていますが、私の知る限りこの時代のマンドリン音楽の専門家はまだいらっしゃらないようです。
是非心ある奏者の方に、この様な楽器を使って当時のレパートリーを開拓していただきたく思います。

ハードケースが付属します。


2018年7月26日追記

この度、調弦をより容易かつ正確に行えるようにするため、調弦ペグの換装を行いました。

元々ペグは↓の画像の中央のタイプでしたが、これはおそらく20世紀に作られたもので、径は太め、使い勝手は最上とは言えませんでした。
金属弦のマンドリンの調弦には細い径が有利で、18世紀から19世紀初頭にかけては
木ペグに金属ロッドが埋め込まれたペグ(画像の左)も使われています。

今回は右のブラスのロッドを埋め込んだペグを特注し交換しました。



加えて、ヴァイオリン用のアジャスターを取り付けました。
おかげで調弦の容易さと精度は飛躍的に向上、調弦のストレスは大幅に減りました。

 

付録:「バロックマンドリン」について
上記のタイプの楽器が「バロックマンドリン」として、あたかも、バロック時代に主流のマンドリンとして存在したかのように
紹介されている例をしばしば見ますが、これは大きな間違いです。

このタイプの楽器、4コースで1コース以外は金属弦および巻弦を用い、
プレクトラムを使うナポリタンマンドリンの発生は18世紀前半と思われますが、
当初は民族楽器のひとつであり、「芸術楽器」として作品が書かれ始めるのは1750年代以降です。

バロック時代にマンドリン(マンドリーノ)として知られていた楽器は、現在で言うミラノ式マンドリンで、4コースから6コース迄各種あり、
ガット弦使用、バロック時代盛期にプレクトラムが用いられることはなく、指頭でのみ演奏されました。
スカルラッティ、ヴィヴァルディ、ハッセなどのマンドリン作品はこのような楽器のために書かれたものです。

したがって、この4コースのナポリ式マンドリンを「バロックマンドリン」と呼ぶことは避けるべきなのですが、
心無い(もしくは正しい知識のない?)製作家や演奏者によって、「バロックマンドリン」の名が浸透しつつあるように見えるのは、大変残念です。
私自身は「古典マンドリン」、「18世紀(ナポリタン)マンドリン」などと呼ぶことにしています。

ただ、このことは、このタイプの楽器を古典派以降の演奏にのみ用いるべきだとは必ずしも意味しません。
古典時代の人が、バロック時代の作品を演奏することもあったわけですし、
結局は、自分の気に入った楽器で好きな音楽をやれば良いというのも、また確かなのですから・・・

「古典」マンドリンと「バロック」マンドリン
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