シターン(3本)

A. ウォルフガング・メイヤー (ドイツ、1990年頃) 価格30万円
演奏動画:https://www.youtube.com/watch?v=Uq4oKX50J-k

B. ピーター・ワイルダー(英)のキットを製作家が組み立てたもの 価格20万円
演奏動画:https://www.youtube.com/watch?v=WejOWrk6sOQ

C. ピーター・ワイルダー(英)のキットを愛好家が組み立てたもの 価格18万円
演奏動画:https://www.youtube.com/watch?v=4T9W2Eh97J4


シターンは16世紀から19世紀にかけて一世を風靡した金属弦楽器で、
特に16、7世紀のイギリスでは非常に人気があり、多くの絵画やシェイクスピアの作品中にも登場します。
コース数が少ないこともあり、同時代のリュートに比べて演奏や楽器の管理は容易です。
指でもピックでも弾くことが出来、得られる音楽的喜びも演奏効果も高い楽器で、
16,7世紀にはリュートにも優る人気があったのも頷けます。


シターンの演奏動画
ソロ(マーク・ウィラーの演奏:彼は私の音楽院の同級生でした( ´艸`))
https://www.youtube.com/watch?v=Su2jKwjUq9A
アンサンブル(ジュリアン・ブリーム・コンソート。ジェイムズ・タイラー(右端)がシターンを弾いています)
https://www.youtube.com/watch?v=EqVBvh6rMaA

シターンの弦数、サイズには広いヴァラエティがありますが、最も広く使われたのは4コースの楽器でした。
様々な調弦が使われましたがもっとも代表的なのは以下の二つです。
A

真ん中の2本にソとレ、外側にミとシがあります。
真ん中の音二つはドローン、外側がメロディ弦と考えることが出来、中世楽器の名残とも言えます。
全体の音域は狭いですが、音が密集しているため、シターンは鐘の鳴るような独特の甘い響きを持ちます。
B

現代のギターと同じで、ギターを弾く人にはなじみやすい調弦です。
小型の楽器には全体を4度上げた調弦を使うこともあり、つまりはウクレレと同じになります。
私も伴奏や即興的に弾く際などにはこの調弦を愛用しています。
17世紀にはこの調弦を施したシターンを「ギターン」と呼びました。

シターンは羽軸などで作られたプレクトラムで、もしくは指頭で弾かれました。
プレクトラムでは音量や速弾きに、指頭はその甘い音色や声部の弾き分けなどに有利です。

シターンのレパートリーははソロ、アンサンブル共に充実しており、シターン伴奏の歌曲も多くあります。
即興演奏やセッションにも、リュートと同じくらいかそれ以上に向いています

シターン曲集へのリンク
https://imslp.org/wiki/Category:For_cittern 

A. メイヤー作(ドイツ、1990年頃)
メイヤーはドイツを代表する古楽器製作者の1人で、多くのオリジナル楽器も修復しています。
この楽器はハンブルグのリュート奏者の弾いていた楽器です。

弦長42センチのやや小ぶりの楽器です。
調弦は現状では下からGCEA、現代のウクレレと同じに調弦してあります。

良い材料と確かな工作精度で作られた楽器で、ヘッドにはライオンの彫刻があります。
ペグは前オーナーによって歯車が内蔵されたものに交換されており、調弦は非常に楽です。
指で弾いても歯切れよく鳴ってくれる楽器で、小型ながら汎用性の高いシターンと言えます。






英国ピーター・ワイルダーのキットの完成品X2


1970年代から80年代にかけてヨーロッパでは古楽器のキット製作が盛んでした。
リュートはハーウッドやドルビーの、チェンバロではツッカーマンの、
そしてシターンはワイルダーの手になるキット楽器は、設計、材料共に質が良く、
愛好家は勿論プロによっても製作され、プロアマ共に弾かれました。

その後、残念ながらキットは採算が合わないことから多くが撤退してしまいましたが、
現在でもそのころに製作された楽器は高い評価を得ています。

このシターンはキットの中でも最も評価が高いものの一つで、
私も学生時代に自分で組み立てて、多くのコンサートで使用したものです。
最も一般的な弦長45センチの4コース、調弦は下からBGDE、もしくはDGBE(つまりギターと同様)です。
オックスフォードのアシュモレアン博物館蔵ダ・サロ作シターンに範をとっています。


このキットはイギリスの古楽器専門店EMSで取り扱われていましたが、製造元と袂を分かち供給されなくなってしまいました(200年代初め)。
その製造元は現在スペインにオフィスがあり、ウェブサイトもありますが実際の業務は行っていないようです・・・。

B
上記キットを楽器製作家が製作したもの。
工作精度も高く、仕上げはオイル、全体に清潔な感じです。

セダーの表面板を持ち、全体に軽やかに鳴ります。
現状では下からBGDEのシターン調弦を持っています。
指で弾いても爽やかですが、ピックで弾くとまるでシンバルの様で、
中世ルネサンスのシターンのイメージにピッタリです。

替え弦、ハードケースが付属します。







C
上記キットを心得のある愛好家が製作したものです。
出品に当たっては、ロンドンの古楽器工房で再調整を行いました。

冬目の強い松の表面板、ニス仕上げ。甘い音色を持っています。
ピックで弾いた際には一種の押しの強さを持っており、アンサンブルでも威力を発揮するでしょう。
現状では下からDGBEのギターン調弦です。

替え弦、ハードケースが付属します。






戻る                           メイル