マティアス・バウアー作 リュートギター/ラウテ/マンドーラ
ウィーン、20世紀初頭
価格18万円 
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久々のリュートギターです。ウィーンの名工房により100年ほど前に製作された上質の楽器です。

現代ではリュートギターと呼ばれることの多い楽器ですが、
もともとはバロック時代にドイツ語圏で愛好されたマンドーラというリュート属の楽器でした。

テクラ作のマンドーラ

マンドーラは18世紀にリュートが使われなくなってからも生き残り、
19世紀にはドイツ風リュート(ラウテ)あるいはマンドーラの名前で愛好されました。

19世紀末の楽器カタログから

20世紀初頭にドイツで国民的音楽運動が盛んになると、リュートギターは最も「ドイツ的」な楽器として脚光を浴びるようになります。
調弦がギターと同様で容易に和声が弾け、持ち運びも容易な楽器として、
野山で民謡を歌うワンダーフォーゲル運動にも良く用いられました。


また20世紀初頭の古楽復興運動にも乗り、リュートギターは「現代リュート」として
中世、ルネサンス、バロック音楽の演奏に大いに用いられました。
その立役者とも言えるのがドイツの音楽学者/ギタリストだったハンス・ダーコベルト・ブルーガーで、
彼はリュートギターの教則本/教本を出版しています。リュートの歴史や奏法にも触れられている大著です。


またブルーガーは音楽史上初の「バッハ・リュート曲全集」を編集、出版しましたが、
これもリュートギターを念頭に置いています。

ブルーガーのバッハ:リュート曲集

リュートギターはドイツの名工ハウザーやワイスガーバーなどによっても素晴らしい楽器が製作されています。
東京のギタリスト長谷川郁夫氏などは素晴らしいハウザー一世のリュートギター(ラウテ)を演奏活動に使用されていますね。

長谷川氏のコンサート情報:https://www.facebook.com/events/327215534285097/

リュートギターはヨーロッパでも現在土産物として、またパキスタンなどでも粗悪品が量産され安価に販売されているものがあります。
それらはシリアスな楽器とは言えませんが、今回の楽器はそれらとは全く異なる本家本物のリュートギターです。

製作はウィーンのマティアス・バウアー。1830年台創立の老舗の楽器工房/楽器商で、ことにリュートギターには良い物が残されています。

今回の楽器も流石にバウアーの作で、素晴らしい材料とクラフツマンシップを見ることが出来ます。
音色や音量も驚くほどに素晴らしいものです。

スプルースの表面板。20世紀初頭に流行した「アンティーク仕上げ」が施されています。
ロゼッタと表面板周りには人工象牙(合成樹脂)のエッジングがあります。


黒檀の指板。


裏板は柾目のハカランダ。現代では望むべくもない上質の材料です。


エボナイズされたネックとヘッド。


ヘッドの造形も流石です。糸巻きも特製で使い勝手は良好です。


弦長は58センチ。現状ではナイロン/巻き弦を張っています。

流石にバウアーの楽器、非常に品位の高い音色で大変よく鳴ります。
非常に弾きやすく、軽いタッチにもまるで楽器が生きているかのように反応し、余韻は長く続きます。
その透明な音色はやはり一流の弦楽器製作家の手になるものです。
現在の状態は良く、すぐに演奏に使えます。

リュートギターというと、なにかアナクロ的に捉えられがちなのですが、
これはこれで歴史の生き証人として、また同時に現代にも通用する生きた楽器として考えられるべきでしょう。

特にクラシックギターを演奏される人で、ルネサンス・バロック時代の作品を弾いてみたい方には
うってつけの楽器だと言えるでしょう。
私の様な純粋?古楽器奏者もこのような名器を手にするとこの楽器をコンサートに使ってみたくなります。

このタイプの楽器は20世紀の中頃に日本にも輸入されており、小磯良平の作品に多く描かれていますね。
私自身、神戸の小磯良平記念美術館で彼の所有していたリュートギターを見ましたが、
実に綺麗な材料とプロポーションで製作された美しい楽器でした。


また武満徹の「リュート作品」も実際はリュートギターのために書かれています。
その意味で日本の文化とも大きな関わりを持っていると言えるでしょう。


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