ラージ作:4コース(ルネサンス)ギター/キタリーノ (イギリス 2018年の新作)
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最高級の4コース(ルネサンス)ギターです。
作者はイギリスのラージ。アーリーギターにスペシャライズする新進のメーカーですが、すでに素晴らしいレベルに達しています。
今回の楽器も音、姿共に非常に美しいものです。

ルネサンスギターは、4コース複弦を持つ小型〜中型のギターで、おそらく15世紀末ー16世紀初頭にスペインで誕生したと思われます。


黄金時代は16世紀中庸で、スペインのムダラ、フランスのル・ロワ、ギィヨーム・モレイユなどにより曲集が出版されました。
それらには数多くのソロ曲およびギター伴奏歌曲が収められています。

モレイユの曲集の表紙


ル・ロワのギター曲集の1ページ

ルネサンスギターの技巧は平易と言えますが、作品の音楽的水準は大変高いものです。
リュートをやりたいけど難しそう・・・と思われる方にもお勧めできます。
実際、私自身、生まれて初めて取り組んだ古楽器はルネサンスギターでした。

小型の4コースのギターを現代では「ルネサンス」ギターと呼ぶことが多いのですが、
16−18世紀には「キタリーノ」(小型ギターの意)、「イタリア風」もしくは「ナポリ風」ギターと呼ばれ、
18世紀の末頃まで使用されていました。
17世紀以降は特にアンサンブルに多く用いられており、作品も残されています。
実際、4コースギターはその小型のボディや少ないコース数にも関わらず、非常に有効なアンサンブル楽器です。
    
17〜18世紀の4コースギター:左から
スミット作、ドルプランク作、ル・ジェーヌ作

4コースギターというと、しばしばチェリーやシープレスなど安価な材料を用い、
デザインも吟味されておらず、工作精度や音も抜きんでいるとは言えない安価な楽器をしばしば目にしますが、
この楽器はそういったものとは全く異なる本気のギターです。モデルは↑のスミットのギターです。
ここまで手をかけて作られた4コースギターは私も初めてです。

最高級のスプルースの表面板。象牙と黒檀の装飾が施されています。

非常に美しいパーチメント(羊皮紙)のロゼッタ。


黒檀の指板には象牙の装飾。大変美しい楽器です。


黒檀の裏横板。見事な曲線を描くラウンドバックです。黒檀の取引が禁止の昨今、このような楽器はもう製作されないかもしれません。




ネックとヘッド裏面にはホリーと黒檀による装飾。目を奪われます。


弦長は51センチ。
従来、4コースギターというと弦長55センチくらいで作られることが多かったのですが、
そのサイズにガット弦を張って第1コースをAに上げることは難しく、
また残されている作品には左手の拡張が要求されるものも多いことから
実際はより小型の楽器がむしろ多かったのではないかと言われてきました。
今回の楽器はガットを張ってA=415および440は勿論、A=466にも問題なく調弦出来ます。,
ソロにもアンサンブルにも用いやすい弦長ですね。
現状ではニューナイルガットで張ってあります。

大変弾きやすい楽器で、軽く弾いても明るい音で驚くほどよく鳴ります。
プンテアードとラスゲアードのバランスも良くサイズも手頃で、4コースギターの一つの典型と言えるでしょう。

この様に、歴史的な情報に基づき専門家により手抜き無しに製作された楽器は見ても弾いても気持ちが良いですね。
最高級の4コースギターをお探しの経験者は勿論、古楽器の入門者にもお勧めできます。
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APPENDIX
ギターとヴィウエラ「常識のウソ!」

16世紀にスペインを中心に用いられたヴィウエラ(ビゥエラ)とルネサンス/バロックギターは、
現代においてばしば混同され、また多くの誤解が見られます。
この機会にいくつか指摘しておきましょう。

左から:ルネサンスギター、ヴィウエラ、バロックギター

*・・・ヴィウエラは宮廷的でギターは民衆的・・・
そうとは言えません。
たとえばムダーラの曲集にはギターとヴィウエラ両方の曲が載せられていますが、
どちらもそのクオリティは同じくらい高いものです。
また、フランスのル・ロワやモレイユの曲集の質の高さは、同時代のリュートとまったく変わりません。

*・・・ヴィウエラは第1コースも複弦である・・・
そうとは言えません。
11本のペグを持つヴィウエラもあり、1弦がシングルであったことも多かったのです。

*・・・ヴィウエラは低音もユニゾンに調弦する・・・
必ずしもそうではありません。オクターブ調弦の記述も残っています。

*・・・ヴィウエラはリュートと同じように演奏できる・・・
そうとは言えません。
同時代のリュートが親指内側奏法で主に弾かれていたのに対し、ヴィウエラは主に親指外側で弾かれました。

*・・・ヴィウエラは第1コースをラに調弦する・・・
特に理由はありません。
リュート、ギター、ヴィウエラには様々なサイズとピッチの楽器がありました。
(つまり現代のギター奏者が「古楽を弾くためにカポタストを用いるの」はナンセンスです。

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