「通奏低音の練習」の補遺および解題


*課題の実施例

課題は以下の進行に数字をつけて小品を作ること、です。


Akashiさんが実施例を4つ送ってきてくれました。

その1


コメント:模範的な進行ですね。気をてらわずしかもとても音楽的です。
見落としてはならないのが、6から7の音にかけてタイをかけていることで、いわゆる掛留ですね。
この種の掛留はバロックの作品には多く見られます。
6の音から7にかけてクレシェンドやメッサ・ディ・ヴォーチェを、
7から6への解決にはその逆にデクレシェンドをすることで、
和声的な緊張と弛緩をより強く表現することが出来ます。
「ため息の音型」とも言われるもので、
モンテヴェルディやパーセル、バッハそしてヴァイスなどもこの進行をよく使っていますね。
ううむ、Akashiさん、なかなか只者ではありませんなー


その2

コメント・同じ和声進行で作られたイングリッシュギターのためのプレリュード。
これも非常に良いですね。
イングリッシュギターの調弦や機能などもよく理解されており、水も漏らさぬ出来ばえです。
一見アルペジオのようにも見えますが、実際には3声からなっており、
ここにも隠された掛留音の進行があります。
これはバッハが無伴奏作品で多用した技法です。


その3

コメント:これもイングリッシュギターのための作品。
おお!なんと!
B上の♯643の和音はなかなか思いつくものではありません。いきなりのイ短調への転調!
大変美しい進行で、また実に効果的です。
ここまでくるともはや「通」好み、
アイデアとしてはC.P.E.バッハばり!でしょうか。


その4


コメント:B上には♯6をつかったプレリュード・ノン・メジュレ。
もう何も言うことはありません。全ての進行が正しく整理されているだけでなく、非常に音楽的です。
コンサートで弾くことの出来る立派な「作品」に仕上がっています。


まとめ
Akashiさんはきっと音楽を系統立てて学ばれたのではないかと思いますが、
なによりも音楽的な勘が鋭い(つまり音楽の才能がある)方なのでしょう。
和声や進行が正しいだけでなく、非常に音楽的です。
音楽的教養の豊かさがこのような小品からもあふれています。
しかも気をてらわず全てが自然な響きです。やりかたもとても丁寧です。
私生活でもバランスのよい穏やかな紳士でいらっしゃることが目に浮かぶようです。
ご職業はお医者さん?弁護士?学校の先生?
Akashiさん、素敵な音楽を有難うございました!

皆さんからの回答もお待ちしています!
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補遺

*7度の連続(低音4度上行)


上の練習を各調で行う。短調の場合は導音が半音上げられる(イ短調の場合はソ♯)ことに注意。



*実際の楽曲におけるシークエンスの例(コレッリのヴァイオリンソナタより)

1段目2小節目:5−6のシークエンス

2段目第2ー6小節:7の連続のシークエンス
低音は装飾されているが、実際の低音進行はレーソードーファーシーミーラーレーソで全て7の和音の適用が可能。


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