4コースギターの世界(2020年3月に横浜で行ったレクチャーから)


4コースギターは15−18世紀に用いられた小型のギターで、調弦はウクレレと同じ。
小型で弾きやすく、調弦や持ち運びも容易。
様々な古楽器のうちでももっとも取り組みやすいものの一つです。

ギターはもともとはリュートのような洋梨型の胴体を持っていました。


15世紀、同じ楽器を弓で弾いたり指で弾いたりすることがあり、弓を使う都合から胴体にくびれが生じ、
指だけで弾かれるようになってもその特徴は残りました。


16世紀の中ごろには胴体のくびれたギターがフランス、スペイン、イギリスでは一般的になっていました。
ただし、この時代の楽器で現存するものはありません。


4コースギターは16世紀に黄金時代を迎え、しばしば「ルネサンスギター」と呼ばれますが、実際には18世紀まで用いられています。


4コースギターの現存する曲集は30冊ほど。
非常に身近な楽器だったので、楽譜に書かずに耳コピや即興で弾かれたことも多かったでしょう。


4コースギターの一般的な調弦はウクレレと同一です。ただし音高は絶対音高ではありません。
記譜法には通常タブラチュアが用いられました。タブラチュアは撥弦楽器の記譜法として非常に優れています。


タブラチュアで記されたソロ曲「ポワトーのブランル」。技術的に容易で初めて弾く曲としてお勧めです。


4コースギターは歌曲の伴奏楽器として多く用いられました。多くは弾き語りだったでしょう。
↓はアルカデルトのシャンソン。19世紀末に「アルカデルトのアヴェ・マリア」として知られるようになった曲の原曲。


4コースギターはとても効果的なアンサンブル楽器。幾つかコードを覚えるだけで古楽合奏に参加できます。
コードの演奏法は様々なヴァラエティがあったと推察されます。


ギターは16世紀に中南米に渡り、様々な民族楽器となって現在まで使われています。
ポルトガルで弾かれた4コースギターは19世紀にハワイに渡り、ウクレレとなりました。


4コースギターには様々なサイズがありました。弦長は30センチから50数センチくらいの幅があったと思われます。


ミランのスミットにより作られた4コースギター。
非常に貴重な楽器ですが更なる研究が待たれます。


イタリアでは「キタリーノ」(小さなギター)と呼ばれる楽器が16,7世紀に用いられ、↑の様な4コースギターのことだと推察されていましたが、
最新の研究では「キタリーノ」は小型のリュート型の楽器であったのではとされています。


ドイツのプレトリウスの「シンタグマ・ムジクム」におけるギター:
彼は本文では4コースと5コースのギターを説明していますが、図版は6コースのヴィオラ・ダ・マノ。
彼は伝聞だけで書いており、ギターは実際には見たこともなく信憑性に欠けるという説も根強くあります。


4コースギターの演奏動画
演奏動画その1(ファンタジー)  演奏動画その2(ブランル) 

4コースギターの入手もだいぶ容易になってきました。皆さんもやってみませんか?(^^♪
 

メイル