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1:古楽と古楽器って?


古楽って?

「古楽」とは、もともとは中世、ルネサンス、バロック時代の音楽を指していましたが、
現在では「その作品が作られた当時の楽器と奏法を用い、その時代の響きと美学を追求した演奏(による音楽)
と定義できます。
例えば、バッハの鍵盤作品を弾くのに現代のピアノを使うのではなくチェンバロを用い、
バッハが想定していたであろうような指使い、アーティキュレイションなどを使うようなことですね。

ちなみにクラシック音楽はそのスタイルから次のように分けることができます。

*中世(1450年、1500年ころまで):グレゴリオ聖歌、エスタンピ、マショー、デュファイ

*ルネサンス(1600年頃まで):ジョスカン・デ・プレ、オケゲム、アテニャン、ダウランド、モーリー

*バロック(1750年頃まで):モンテヴェルディ、スカルラッティ、ヴィヴァルディ、ヘンデル、バッハ

*古典派(1820年頃まで):モーツァルト、ハイドン、ベートーベン、ソル、ジュリアーニ

*ロマン派(1870年頃まで):ショパン、シューベルト、タルレガ

*近現代(現代まで):ワーグナー、ドビュッシー、ラヴェル、ヒンデミット、ブローウェル、武満徹


その作品が作られた当時の楽器と奏法を使い、響きと美学を追及する」ということでは、
「古楽」の考え方はバロック時代までにのみ有効なのではありません。
モーツァルトやベートーベンは勿論、ワーグナーやラヴェルにまで「古楽」のアプローチはあり得ます。



古楽器って?

一般的にはおおむね19世紀以前に使われていた楽器の総称です。
リュートやチェンバロ、リコーダーなどは
16−18世紀が全盛期で19世紀には滅びてしまった「古楽器」です。
フルートやヴァイオリンなど現代まで使い続けられてきた楽器も、
その昔は例外なく材質やセッティングが現代のものとは異なりました。
例えば現代では総金属製で多くのキイを持つフルートは、
もともと木製でキイを持ちませんでした(ルネサンスフルート)
バロック時代のヴァイオリンはやや小型でネックが短く、
張力も小さなものでガット弦が張られました(バロックヴァイオリン)。

われわれ現代の古楽器奏者は、残されているオリジナル楽器や、
オリジナルとおりに作られたレプリカ楽器を使って演奏しています。



何故、古楽器を?

古楽器は現代の楽器よりも演奏が容易です。
張力は低く弦は押さえやすく、音も出しやすいのが特徴です。
筋力はあまり必要ではなく、むしろ細やかな神経の働きによって演奏する楽器です。
現代の楽器に比べて、おおむね音色は優しく柔らかく、キャラクターがあり、
その音はまるで言葉の様に響きます。

こういった楽器で当時の作品を演奏してみると、楽曲が生き生きと表現されることに驚かされます。
演奏するのに余計な力もいらず、その作品の良さが自然に出てきます。

私が古楽器を使うのは、現代の楽器よりも容易に、そして楽しく音楽することが出来るからです。

同様のことは声楽にも言え、音量を重視せずヴィヴラートを抑えた歌い方は
歌い手にも聴き手にも優しい音楽つくりを可能にします。



どんな古楽器が?

私の専門とするリュート、ギター関係の古楽器には次のようなものがあります。

*中世: 中世リュート、ギターン

*ルネサンス: ルネサンスリュート(6〜10コース)、ルネサンスギター、ヴィウエラ、シターン

*バロック: バロックリュート(11/13コース)、バロックギター、テオルボ、ア-チリュート

*古典派: イングリッシュギター、ロココ・ギター、6コースギター、19世紀ギター

*ロマン派: 19世紀ギター


(参考:楽器について)



古楽器を弾いてみたいが、何から?

単純に好きな楽器、好きな音楽が出来る楽器を選びましょう。

例えば、ダウランドのリュート歌曲に惹かれていたらルネサンスリュートを、
バッハが好きでしたらバロックリュートを、バロックのアンサンブルに興味があればテオルボを、
バロックのダンス音楽に興味があればバロックギターを(いきなり)選んでしまいましょう。
それぞれの楽器に難易度の差はそれほどなく、あっても熱意で克服できます。
また、古楽器を始めるのに(クラシック)ギターをまず学んでおく必要は全くありません。
(逆にクラシックギターの経験が無いほうが上達が速い場合もよくあります)

もしもご自分にあまり強いイメージがない方には、
まずはコース(弦)数がそれほど多くなく、レパートリーも広い楽器を薦めます。
6/7コースのルネサンスリュート、バロックギター、イングリッシュギター、19世紀ギターですね。



(クラシック)ギターを弾く人には?

ギターのレパートリーとしてダウランドやヴァイス、バッハのリュート作品は馴染みがあるので、
ルネサンスリュートやバロックリュートを始める人が多いのですが、
実際にはこれはそれほどお勧めではありません。

原則としてリュートは爪を用いないので、ギターと並行して学ぶことはなかなか難しいのです。
どうしてもクラシックギターとリュートを両立させたい人でも、
しばらくの間は爪を短くしてリュート本来の奏法を学ばれることをお勧めします。

バロックのアンサンブルに興味がある人にはテオルボかバロックギターを薦めます。
これらは爪を使った奏法にも比較的よく適応します。
クラシックギターとは異なる奏法を学ぶ必要は勿論あります。

19世紀ギターはモダンギターとかなり似ていますからとっつきやすいですが、
逆にモダンギターそのままのアプローチをしてしまう危険もあります・・・



古楽器、どうやって手に入れる?

全くの初心者の場合は、購入にあたってアドヴァイスしてくれる人を見つけられると良いですね。
教室を開いているプロのワンレッスンや講習会に参加して尋ねてみるのも良いでしょう。
大概のプロは製作家や中古楽器の情報などを持っているものですし、
楽器を貸してくれる教室や機関(リュート協会など)もあります。
ひとつ注意点としては、安価だからといってネットなどで売られている安値の楽器には
よほどの知識がない限り手を出さないのが得策です。(参考:楽器の入手を考えている人に)


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