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オリジナルの楽器には、真珠母貝、象牙、鼈甲などで 豊かに装飾されているものが多く残されています。 「装飾された楽器は、むしろ美術品で、実用品としての使い勝手は悪い」との 意見はしばしば聞きますが、私の経験ではそれはまったく間違いです。 装飾された楽器は単価が張るため、表面板、裏板などの材料の質が高く、 また優れたクラフツマンによって製作されている場合が多いのです。 装飾された楽器とシンプルな楽器の音の出方は確かに異なります シンプルな楽器は、ボディ全体が均一に鳴りやすく音量もある場合が多いのですが、 装飾された楽器は、より複雑で修辞的、品位が高く語るような鳴り方をする場合が多いのです。 音量はそれほどなくとも、音色が複雑な分、音の通りは良いものです。 そこで、私自身は大きなホールや大きなアンサンブルには 装飾の少ないコピー楽器を用いていますが、 響きの良い会場でのソロコンサートには、装飾されたオリジナルの楽器を使っています。 セレスのエングレギター イギリス、19世紀中庸 19世紀のロンドンの楽器製作者でエングレーバーとしても一流だったセレスの作品。 その彫りは精緻ながらもダイナミックで、見るものをハッとさせます。 裏横は美しいハカランダ。象牙のバインディング。 エングレーブによる署名 糸巻きのつまみも真珠母貝です。 ブリッジとヘッドにも美しい彫り 19世紀中庸のイギリス・スタイルを代表するギターと言えます。 真珠母貝の装飾ギター フランス:19世紀中庸 19世紀ギターとしては最も装飾されている例ですね。 表面板周り、ロゼッタは言うに及ばず、指板、ヘッド、ブリッジにも真珠母貝が使われています。 真珠母貝には細かな彫りが為されていて、クオリティも大変に高いものです。 イーグル(鷲)が重要なモチーフになっていますが、 おそらくは注文者の家の紋章なのでしょう。 裏横は最上級のハカランダ材。ネックは黒檀張りです。 このような楽器は、オーナーの家によって大切に保管されている場合が多く、 オリジナルのケースも残されています。 この楽器のケースの物入れには、古いストラップと弦(絹上の巻き弦、ガット弦)が残されていました。 19世紀当時のものである可能性も高く、貴重な資料と言えます。 フランスの名工プティジャンのギター パリ/ミルクール 1810年頃 ごらんのように表面板全面に真珠母貝の装飾が施されています。 モチーフは真珠貝 ブリッジも相当に凝っています。 裏横は見事なバーズアイ・メープル! 敏感で鳴らしやすい楽器ですね。 ふるいつきたくなるような音でレガートに鳴ります! 装飾19世紀ギターの代名詞! ポンズ作のギター (ロンドン/パリ 1830年頃) これも真珠母貝の装飾・・・ただし幾何学?模様。 ブリッジピンにも注目! やや重めの音です。パノルモ系とフレンチの中間的な色合いでしょうか。 薔薇のギター ロンドン 1850年頃? 真珠母貝の装飾が表面板一面に! 表面板の形もセクシー? 装飾モチーフは薔薇の花です。 裏横は品の良いブラウン色、 材料は・・・ラコートなどによく見られるマホガニー系? この楽器、ひそかに「恋におちて」ギターと呼んでいます・・・ (といーきーをしーろいーばらにかえてーぇ)っていうやつね、古い? 高音が歯切れ良く、低音は豊かに鳴る楽器です。 リボー・イ・アルカニス作のギター バルセロナ、1890年頃 ミゲル・リョベートが愛用したというリボー・アルカニスの楽器。 真珠母貝と木による繊細な装飾です。 裏横は最高級の柾目のハカランダ! ヘッドやペグも装飾されています。 タッチに敏感であるとともに、ある種のおおらかさも兼ね備えた名器!です。 |